半世紀以上にわたって報道写真を撮影してきたカメラマン藤田観龍さん(77)=川崎市川崎区=が、喜寿を迎えた集大成として写真集「写真報道50年の軌跡」を出版した。ロッキード汚職事件、日航ジャンボ機墜落事故、東日本大震災などの大事件や事故、災害に加え、公害やヘイトスピーチ問題など川崎から世相を切り取った写真392点が並ぶ。
288ページに及ぶ分厚い写真集の1枚目は、六郷橋から写した多摩川の風景。右岸の川崎市川崎区、左岸の東京都大田区が青空に映える。「川崎に住んでいたから、こうしてたくさんの写真が撮れた。羽田空港が近くて、すぐに全国どこの現場にも行けるから」。自らの原点への思いを最初の1枚に込めた。
「私は悪運が強くてね」と笑う。1991年の雲仙・普賢岳の大火砕流では、同行した記者と山に登る途中で引き返した直後、火砕流が襲った。一つ間違えば自らも巻き込まれていた場所で撮影された写真には、もくもくと上がる黒い噴煙と、ただそれを見つめる消防隊員の後ろ姿が写っている。
これまでに3冊、芸術作品などを収めた写真集を出してきたが、10月に喜寿を迎えたのを機に「長い間やってきたから」と、集大成として報道写真を一堂に集めた。自らのテーマは「ずーっと平和」。川崎区桜本でのヘイトデモへの抗議活動や、沖縄の文化を集めた「川崎はいさいフェスタ」の様子も写真集に盛り込んだ。「私は桜本に住んでいたこともあってね。川崎はみんなが一緒に暮らしてきた街。外国人もどんどん増えてきている今、民族差別なんて許せない」。これからも現場に出向き、シャッターを切り続ける。
写真集は「本の泉社」から。A4判、288ページ。4千円。
神奈川新聞社
【関連記事】
Source : 国内 – Yahoo!ニュース